no colon good astarisk



[WRITTING]

*日記やエッセイのような軽い読み物ではないのであしからず*
*短いですが、全て別の物語にしていきたいと思っています。*
*行間から主題や設定を判れよっていう文章が嫌いな方はお勧めできません*

*

[想起する君]


呆然とただ君は雨の歩道橋に立っている。
僕は君を見上げて、この世の絶望や、暗澹とした未来や、失われてしまった誇らしい過去を想い続けている。
6月の雨の中で君は何を信じ、何を見つめ続けるのか。
その断片さえわからずに僕は。真っ黒な傘を空に広げている。

幸福な時はそれほど長くは続かず。
いつも歩く道は険しい。


2003年6月30日(月)21時36分

*

[LUCK STAR]


僕の立つ場所に僕の平穏はあるのだろうか?
僕の眠る場所に僕の未来はあるのだろうか?
求めすぎることが当たり前になりすぎてはいないだろうか?
制約を束縛と勘違いしていないだろうか?
幼すぎてはいないだろうか?
大人でありすぎてはいないだろうか?
歩いているように見えて実は立ち止まっているのではないか?
口先だけで生きてはいないだろうか?
これが現実だ。
僕らは現実の中に生きていることを忘れてはいないだろうか?


2003年6月30日(月)21時28分

*

[僕の情報と空想の世界。それから]


1年近くも会っていない昔仲のよかった友人から連絡がった。
大学を出ると、世の中が突然めまぐるしくなって、現実が僕たちに押し寄せてきて、世界がどんどん小さくなっていくように感じる。
「きっとこれ以上の生き方はないのだ」とその友人は嘆くように笑って僕との再会を終えた。
3日後、友人の死が僕に知らされた。
伝えてくれたのはその友人の僕の知らない恋人だった。
彼女は簡単に事故の内容を説明してから一通の手紙を僕に渡した。
内容は彼女も知らないらしい。
友人はあまり自分の事を話さない性格だ。
それは親友や恋人や家族であっても同じだった。
その恋人にも彼は何も残さなかった。
僕は、僕の名前が記された手紙を開く。

『どこから始まったかは知らないが、君は僕と空想の世界を生きていたようだ。空想は時に残酷で、終わりや始まりをまとめあげてはくれない。だから僕達はどこから始まったかもわからず、どこで終わったのかわからず、ただその世界を泳ぎ続けるしかない。いつか僕がこの世界からいなくなった時、君は一人でいられるかい?』

友人の恋人がいなくなった1時すぎのファミリーレストランで、僕はその手紙を何度も読み返しながらコーヒーをすすった。

手紙の最後には小さな字で見慣れない住所が書かれていた。
ずっと南のほうの地名だった。

僕は時計を見つめる。
あと4時間で僕は友人と作った空想の世界から抜け出す旅に、南を目指して出かけなくてはならない。
根拠はないが、そう確信していた。



2003年3月4日(火)02時17分

*

[りくえすと]


−まいった−
喜田川真由は心の中でそう呟いた。
けれど顔には笑顔、にこやかにオーダーをレジに打ち続ける。
「−それと、パンプキンサンドー・・ああー、やっぱりこっちがいいかなぁー、麦芽100%サラミサンド?これがいいかもー・・あとねー、コーラが、ええとロングサイズで、いち、にぃ、さん、四人分でー、それからね、ポテト、ポテト、うーんと。あ。えっとその前にフライドチキンを頼んだほうがいいのかな?ええとー…」
真由は店の奥にかけられた時計をまた軽く振り返った。
まいった。待ち合わせまであと10分しかない。
シフトタイムはもう5分ぐらい過ぎているのに、目の前の学校帰りの女子高生集団は一向に注文を終わらせるつもりはなかった。−こんなことなら、早めに上がっとくべきだったっか−
悔やんでも始まらない。
「−ええと、以上でお願いしますー」
「ありがとうございます。注文を繰り返させていただきます」
いつもより少し声が硬くなってる。
速やかに注文を繰り返し、破顔一笑。
「以上でよろしいですか?」
−よし、これで終わりだ。あとは、他の人に引き継いでもらえばいい…−
「あ、すみませんー、追加いいですか?」
「あ、私もー、やっぱ変えますー」
−やられたっ!−
喜田川真由は心の中でそう呟いた。
−確実に遅刻ダナ−


2003年2月10日(月)02時35分

*

[百萬辺]


百萬辺の古書店で手に入れた紙魚だらけの本を片手に疏水の柳道をそぞろ歩く。
ふと目に止まった静かな喫茶店に入ってアフタヌーンティを注文した。
「なにを読んでいるのですか?」
そう声をかけられたのは店に入ってかれこれ3時間を過ぎた頃だった。
テーブルの向かいに座った彼は物腰の良い、落ち着いた雰囲気だった。
私は彼の顔に記憶がなかった。
だから少しうつむき加減に座席の後ろに下がりながら口を開く。
「フランソワ・ヴィヨン…」
「形見分け?」
「いえ、今は遺言集を…」
「どちらにしろ若い女性が好んで読む本じゃないですね」
彼は笑ってそういった。
それから私は彼とフランス文学について少し、市内の感じの良い喫茶店の話について少し、それから自分達のことについて少し話をした。
「また、会えればいいですね」
彼はさわやかな笑顔を見せて私の座るテーブルから立ち去った。
私は窓の方を見てすっかり暗くなった街並みを眺める。
ため息を一つ。
「ナンパする相手ぐらいよく考えろよ…」
なげくように呟いて私は席を立った。
明日の仏文ゼミの話のネタが決まった気がする。


2003年2月6日(木)18時56分

*

[うた]


ごんっ
脳みそが逆転するような強打に足がよろけ、そのまま道路の側溝につっこんでいく。
「キャハハ」
殴った男は狂ったように笑う。
一人の男が、倒れた僕の制服のポケットに手をかけた。
「きたねぇー。こりゃ制服買い替えだわ」
とぼけた声を上げながらポケットに手をつっこみ財布を抜き取った。
「いくらある?」
殴った男が財布を覗き込む。
「お、こいつ万札もってやがるぜ」
「いいねぇ。これでメシくいいこうぜ」
男達は口々にいいながら僕の前を立ち去ってしまった。
僕は側溝から這い出ると、ずぶぬれになったズボンの裾をぎゅっと絞る。
ぼたぼたと夏の路上に水滴が落下していった。
道の反対側まで投げ捨てられていたカバンを見つけ出して歩き出すと、なぜか涙が溢れてきた。
向こう側からやってくる、犬の散歩しているおじさんにばれないように鼻歌を歌いながら空を見上げる。
空が青くて、また泣けてきた。


2003年1月29日(水)18時25分

*

[箱]


麗しの我が下宿に帰ってくると、箱があった。
黒くて、見るからに硬そうな、小さな箱だ。
箱はちゃぶ台の上に乗っかって部屋を睥睨している。
目があるのだ。
箱には目がある。
俺の方を一度にらむとすぐに飽きたように視線を逸らした。
あまりにも気味悪いのでそいつを捨てようと箱を手に取ろうとすると重くてどうにもならなかった。
箱は可笑しそうに笑った。
俺は両手を使ってみるが持ち上がらない。
まるでちゃぶ台にぴたりついているようにうごかない。
俺は友人の携帯に電話をいれた。
しばらくして友人が面白がってやってきたが、二人でもちあげようとしてももちあがらない。
次に俺は警察に電話を入れた。
めんどくさそうに派出所の警察官がやってきたが、どうにも手の施しようがない様で、解体屋の電話番号を教えてくれた。
箱の目は人が入れ替わり来るたびににらみつけたりと笑ったりせわしなくしている。
解体屋はいろいろと試して見たが無理だと言って帰ってしまった。
それからしばらくして宗教団体がやってきた。目の神をあがめているらしい。
俺は大家に電話をして事情を説明し、翌日部屋を出て行くというむねを伝えた。
まぁ人生のうちで一度はこういうよくわからないこともおこるもので。
そのあと箱がどうなかったかは知らない。


2003年1月23日(木)01時23分

*

[ひとつめのせかい]


一つ目の世界が消えてしまった朝。
私は顔を洗って、歯を磨いて、軽い朝食をとった。
テーブルの上に置いてあった読みかけの『草の葉』をぺらぺらとめくって。
まあ、ありきたりの休日のようで心はどうも冴えてくれない。
いつだったか、消えてしまった世界で友達が言った言葉を思い出して、少し泣きたくなった。
わたしはもう、あの世界には帰れない。
昼過ぎに懐かしい人から電話があった。
私の中で二つ目の世界がちょっとづつ生まれ始めた。

世界はわたしたちの気持ちなど気にしないように、突然わたしたちをまきこんで、懐かしい心地よさを与えてくれる。
それから突然、消えてしまう。
その繰り返しの中で私達は生きている。


2003年1月15日(水)21時56分

*

[月を喰らった猫。]


月を喰らった猫の話はこれで終わる。
猫は月になり、猫とは呼ばれず、ただ月と呼ばれる。

世の中は何も変わらず、月を見つめる瞳も何も変わらず。
やがで猫のことは忘れ去られ、月だけがそこに残る。

月は猫ではなくはるか昔から月であり、ただ大地を見つめ続ける。

あらゆる人から忘れ去られる前に語ろう。
猫の名はダーツ。くらやみの光。月を喰らった猫。


2003年1月4日(土)08時58分

*

[のみこむもの]


いったいどれほど喰らっただろうか。
何故月を呑みたいかなどとうに忘れ。
ただ、目的が理由になり、いのちなどという存在すら忘れてしまった頃。
僕はようやく月を喰らう時を得た。
月は何も僕に問わず。
僕は月に何の感慨も抱かず。

僕は月を喰らい。

僕は月になった。


2003年1月4日(土)08時53分

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